2017.6.1 名古屋城二の丸広場特設会場
中村屋一門によるテント興行「平成中村座」亡き勘三郎さんが立ち上げた名物企画を二人の息子が継承している。
前回、前前回の浅草寺、その前の大阪城、そして勘三郎さん時代の大阪城を目撃している。
今回の名古屋公演、ひょんな事から良席を譲っていただき初日興行を鑑賞。昼の部〜夜の部、11:00から19:40まで桟敷席に座った。実は今回の公演が一番良かったと大絶賛するのである。父勘三郎の偉業を継承するのに必死だった数年間が、本公演では見事に昇華されて、正真正銘、勘九郎、七之助を軸とした中村屋総体による中村座という感じがした。では各演目の感想をば!
[昼の部]
「壽曽我対面」
オープニングに相応しい華やかな舞台。一門総出演という豪華絢爛、圧巻の舞台。
「封印切」
上方の人情噺。成駒家のお家芸を当代看板役者の中村扇雀が情感たっぷりに描く。梅川として登場する七之助の艶やかなこと、ため息の出る美しさ。イヤミな丹波屋八右衛門に扮する勘九郎も、素晴らしい上方テイストを醸し出していて感心する。
「お祭り」
中村座らしい江戸情緒溢れる舞踊で打ち出し。恒例の演出も新緑鮮やかで拍手が鳴り止まなかった。
[夜の部]
「義経千本桜」
有名な化け狐の出て来る「川連法眼館の段」。過去に何度も観ている演目だけど、扇雀バージョンは初めて。源九郎狐の悲哀や可愛らしさを、扇雀が繊細な顔芸で彩っていく。歌舞伎座と違って大道具の制約のある中で、素晴らしいエキサイティングな舞台に圧倒される。中でも萬太郎、虎之助の若手二人の成長が顕著。中村屋の右腕、亀蔵の存在感が凄かった。
「弁天娘女男白浪」
いつも美しい女形しか見れない七之助が男性に扮する貴重な演目。弁天小僧の七之助は、やっぱり美しくて、どこまでもイナセなのである。彌十郎が特に良かったな。
「仇ゆめ」
これは中村座オリジナルなんだろーなぁ。とにかく幻想的で、定番の演出が夜のバージョンで鮮やかさを増す。コミカルで会場中を沸かせ、演者、客席一体に大盛り上がりの大トリ。素晴らしかった。
とにかく今回はチームワークの勝利といった趣。勘九郎、七之助を中心にしつつも、扇雀一座の風合い、それを彌十郎、亀蔵がしっかりフォローアップ、若手のブレンド具合も丁度良しのバランスの妙が見どころ。中村座過去ベストを更新したと思う。