2016.9.4 TOHOシネマズ
「日本人で良かった!」観終わった後の率直な感想だ。アニメーターとしての実績しか知らなかった庵野監督の総指揮のもと、TOHOの威信をかけた仕事だったのがよく分かる。絶妙なキャスティング、綿密な取材に基づいた細部の整合性、そして息をのむゴジラの演出。多くの名優たちが、ほんとにちょい役で随所に散りばめられていたが、きっと俳優にとっては”一世一代の仕事”だったのだろうと想像する。
さて、なぜここまで人を惹きつけるのか? 庵野のルーツであるエヴァンゲリオンよろしく、その不変のテーマ性にあると思う。想定外の危機(映画の中ではゴジラ出現)で、機能しない民主主義、国家という枠組み、そして世界という概念の脆さ……、それはどんな人も感じる体制やシステムへの危機感、絶望感、焦燥感みたいなものに通じている。現代社会に生きる人間は、何かしら”ゴジラなるモノ”に日々対峙して生きているのである。そして、その張本人のゴジラでさえ、自分たち人類のエゴが産んだ化け物であるという大いなるパラドックスを見事に描いているからだと思う。
今作の作品自体の優秀さはさることながら、TOHOの映画会社としての心意気を強く感じた。オープニングロゴからタイトルバックに至るまで、日本映画界の伝統に基づいた処理。いわゆる広告代理店や民放との共作ではなく、独自にハンドリングしたという全リスクを覚悟した自負が潔かった。ラストに、あの見慣れた「終」がスクリーンに映し出された時、泣きそうになった。原発問題、被災地支援、東京一極集中、日米安保、ヒロシマの記憶、それらすべてを緻密に織り上げた西陣織のような絢爛豪華な極上エンタテインメント超大作。歴史に残る名画だと思うのだ。
▼シン・ゴジラ公式サイト
http://www.shin-godzilla.jp