2014.1.29 シアター seven(十三)
映画女優ほたるの初監督作品。葉月螢としてピンク映画を中心に20年のキャリアを持つ彼女が、脚本から監督、そして主演までをこなした意欲作。知り合いの
月刊ぴんくりんく編集長、太田耕耘キさんとのトークショーもあるというので十三シアター sevenへ。
自主制作プンプンのテイストに、ほたる監督の私小説ともいえるストーリー展開は、誰もが持つ恋愛…というより性愛の襞を丹念に描いている女性らしい女性の為のロードムービー。
個人的な見所は、やっぱり伊藤猛の演ずる夫。さすがに女性監督である。よーく男を観察している。めちゃめちゃ俯瞰にこの夫の人物造詣をしているなぁ…と感心しきり。もちろん主演のほたる演じる女は、底抜けにリアルで男性目線からすると抽象的。現実的な抽象感を巧く表現しているなぁ…とこれまた感心。
筆者も50年も生きていると同じような経験はまぁあるワケで、あの女々しい男心をよくもまぁ、アッケラカンとフィルムに焼いてくれましたね!と、全男性を代表してほたる監督には苦笑と共に拍手を送りたい。そして、もはや五十路となった我が身を憂い、「もの言わず そっと股間を 見おろして」な心境にさせられて、どうにも凹む映画でもあった。
女性らしく、シンプルなテーマを様々な意味深モチーフで練り上げて行く丹念さもこの映画の魅力のひとつ。猫、ストーブ、納豆…、特に納豆シーンはきっとテイクを重ねたであろう監督メッセージが込められたモチーフ。小説でいえば小川洋子を川上弘美でくるんだような質感。
そして一番感じた事。あれだけ臭気をモチーフにした映像なのに、なぜか匂いの連想が出来なかった。まったく無臭な感覚が不思議だった。映画のことはよくわからないが、そういう撮り方ってのがあるんだろうか?臭気を感じさせないくらいに映像表現として完成されていたのだろうか?
そこの結論がまだ出ていないのではあるが…。すべての壮年男子こそ観るべき映画。
「キスして。」オフィシャルサイトはコチラ
予告編↓