2017.7.25 木挽町/歌舞伎座悲しいニュースもあってか、連日大入りの歌舞伎座と聞く。夜の部は「通し狂言 駄右衛門花御所異聞」という極め付けの荒事芝居。中でも市川宗家、海老蔵による日本駄衛門、玉島、そして秋葉大権現への早替えの鮮やかさ。まるでイリュージョンのような見事な転換であった。次々に出てくるのは成田屋社中のいつもの面々。そして中車や巳之助、児太郎といった看板役者も入れ込んだ豪華なラインアップ。舞台の作り込みは異常とも思えるほどの大スペクタクルで、”あぁ、なるほど、新感線のノウハウを松竹なりに昇華させた結果なんだなぁ”と納得の、気合の入った大道具陣。松竹の底力をまざまざと魅せて頂いた。内容はもうミュージカルというか劇画というか、とんでも話が面白くって目が離せない。長丁場なのに、飽きずにストーリーに素直に入って行けた。解説によると1761年(宝暦11年)初演というから、四代目か五代目の團十郎による「秋葉権現廻船話」を、当世海老蔵(十一代目)が復活させた意欲作。確かにダンス・パフォーマーは登場するわ、花火は炸裂するわの凄い舞台で度肝を抜かれるのであった。圧巻は二幕目ラストの秋葉権現と白狐御前の宙乗りシーン。海老蔵と勸玄くんが天に昇って行くシーンはおっさんの目にもグッと来てしまった。
意外にも"お才"を演じた児太郎くんにギュンと来てしまった。中車は、なんだか宗家に遠慮したかのような存在感の無さに、梨園の身の処し方の難しさを勝手に感じたり…。とにかくエポックな現場に立ち会えた、今年の「七月大歌舞伎」なのでした。頑張れ!海老。頑張れ!カンカン。最後に真央さんのご冥福をお祈りいたします。
▼市川宗家宙乗りシーン