2016.8.25 木挽町/歌舞伎座
芝翫襲名をひかえた中村橋之助としては最後となる「土蜘蛛」はどうしても観たかった。一部、二部も捨てがたかったが、なんとか三部だけを目撃に駆けつける。「名前が芸を創る…」とは鴈治郎さんの襲名時の言葉だが、さすがの名演技だった。巳之助、猿之助、勘九郎によるファンキーな狂言まわしや、渋い演技の扇雀、強面キャラ全開の獅童と、正にオールスター夢の競演状態で、橋之助の有終の美を飾ったのであります。ラストお決まりの蜘蛛の巣も、流石のピシッと決まる締まった所作で、本当に格好良かった。
そして、新作歌舞伎『郭噺山名屋浦里』である。タモリ発案、鶴瓶が落語にかけたという話題の演目。たいして期待はしていなかったのに、ラストの七之助の花魁道中のシーンでは涙が溢れてきたのだ。なんといっても話は良いのだけれど、七之助の美しさ、艶やかさに会場中が溜め息。素晴らしい芝居を魅せてくれた。扇雀さんの上方台詞が入るのもナイスな演出。鶴瓶の息子…は、どうなんやろ?とは思うが、間違いなくこれからずっと演じ続けられる素晴らしい新作歌舞伎だった。
他人事で恐縮だけど、鶴瓶さんはもう息子を独り歩きさせないとあかんのになぁ…と勝手に思う。息子が可哀想やと少し感じた。