2015.1.29 OSAKA ABC Hall
大好きな劇団に最愛の女優が客演しているというシアワセな状況で小雨降るABCホールへ。一年間のカナダへの国費留学を終えた演出家、菜月チョビがどんな復活公演を仕掛けるのか?ここは故郷である関西の初日に行こうと決めていた。
結論から言えば「脚本(ホン)が独走していた」のである。台本が良すぎるのである。丸尾は文学の域に辿り着いたのではないか?とさえ思った。思わず劇団初の上演台本を1200円で買ってしまった(笑)
肝心の舞台である。当然ながら気心の知れた劇団メンバーは必死で丸尾ブンガク・ワールドを演技化する事に集中し、感情というより情念表現を多く求められる芝居をよくやったと思う。キャストにとって今作は地獄ではなかったか?と思うし、役者にとってこれほどやり甲斐のある台本もなかったろうと思う。客演の木村了は、鹿殺しファンにとっては新鮮で清涼剤的な役割で、今作の時代感みたいなものをうまく伝えれていたと思う。
菜月チョビがカナダに居る間、丸尾とどれほどの連絡を取っていたかは知らないが、お互いの中には2014年に頻発した四国や広島、長野での土石流事故がアタマにあったことは間違いない。PRでは「ベルゼブブ兄弟」を原題に〜などと統一してはいるが、これは単なるモチーフ。実のところ、大地が滑り崩れるというリアルな現象は、今の日本人みんなの共通強迫観念になっていて、虫眼鏡で覗けば覗くほど、その意味合いは大きく膨らんでいく。今のイスラム国周辺の世界緊張や、日本の政治課題にまで、この地滑り感覚はついて回る。
菜t月チョビが演出に徹したのも、その丸尾の文芸を、大好きな仲間たちと共有するためでなかったか?(ようするに舞台に立つより、何より客席から鹿殺しを観たかったんだと思う)
そして、我らが美津乃あわである。今作では完璧なアシストに徹しているところにプロを感じた。逆に言えば美津乃あわ的な武器を一切排除した丸腰の客演だったように思った。
いずれにしても役者とっては地獄かつ官能的な舞台であったはずで、丸尾は文学を完成させた、彼らにとってエポックな作品になったと思う。そして客席からじっと見続けた真っさらなチョビは今後の鹿殺しを夢想したはずである。そう考えるとどこまでもマジメな劇団である。ゆうちょのCMでは無いが「マジメばか」やと思う。
さぁ、次はどこに連れて行ってくれるのだろうか?次回作が本気の本番なんだろうなと強く思えたのである。
2/1までABCホールで。当日券も若干あるみたいなので是非目撃しておくべき問題作である(と思う)
↓今作のPVです。
↓劇団鹿殺しの公式サイト
http://shika564.com/wordpress/