2014.11.20 第七芸術劇場ピンク映画というジャンルが出来て50周年という節目は、このジャンルの黎明期を疾走した渡辺護監督(2013.12.24に82歳で没)の一周忌と重なった。そもそもこの脚本を手がけた井川が渡辺の遺志を継いで撮った鎮魂のピンク映画だという。
フィルムで撮られた映像は、さすがにマットでシルキーな質感。デジタルには無い手触りが感じられた。主演の愛田奈々さんはグッとくる妖艶さと可愛さを併せ持っての好演。日本の四十八手、それに七福神という可笑し味のあるモチーフに、しっかりとピンク映画たるエロステイストが絡み合っていて、オモシロエロい作品に。
僕の居たぴあという情報誌にも長らく「ピンク映画」の見開きページが存在した。平等性、客観性を高らかに宣言していた当時のぴあにとって、ピンク映画業界は次代へ羽ばたく作り手達の発芽の場であった。現に井川監督も'86年製作の「ついのすみか」でぴあフィルムフェスティバルで入選されている。しかも新入社員だった僕はこの作品を研修かなんかでなぜか観せられた記憶がうっすらあるのだ。その後、ピンク映画はAVというジャンルの下に混迷期を迎える。ぴあも大口広告クライアントや、書店サイドのウネリに抗えず、ピンク映画欄を排除してしまう。時代の流れといえばそれまでだけれど、上映館の若者離れ、それと新人監督の登竜門がそことは違う方向に向かって行った大きな転換期だった。
その後も青色吐息でピンク映画は撮られ続けていたワケで、五十周年という節目に超コンサバなピンク映画らしい今作は意味のあるものだと思う。少々脚本が急展開し過ぎたり、おいおいな落としなど。おやおや?な感もじゃっかんあるのだけれど、それさえ作品全体の滑稽さに寄与していて面白かった。周囲の草食男子に辟易としている女子にこそ観ていただき、大いに笑い飛ばしてほしい快作である。
●大阪は十三・第七芸術劇場で本日レイトでラスト、その後、京都みなみ会館、神戸映画資料館と巡回します。
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