ドキュメンタリー映画『疎開した40万冊の図書』を試写で見せていただいた。”静かなる怒りの映画”は、かくも清々しくテーマを投げてくるのだと知った。
内容のメインを通っているのは、第二次大戦末期に当時の日比谷図書館の蔵書と、買い付け図書を合わせた40万冊を勤労学生を動員して郊外の農家に疎開させた中田邦造。当時の学生から図書館関係者など10名の証言を散りばめた内容は、単なる史実の検証に止まらない、静かに観客の胸をえぐる”強さを持ったドキュメンタリー映画”だった。その大きなテーマに対して、東日本大震災の被災地である飯舘村の図書プロジェクトと陸前高田市の市井の人々が広がっていく。時代も状況も違って、何の関係性もないふたつの事実を”図書館クライシス”というモチーフで紡いでいる緻密さに感心した。一般の人々の言葉はストレートに観客に入ってくるし、それは単なる悲しい事実の証言集ではなく、見る者を勇気づける優しさに満ちた映像だった。戦争と天災(いやここで描かれているのは人災)という大きな翼に、図書館が一国の文化を担って来たという真実を串刺しにした作品となっている。本好きはもちろんのこと、今の何となくゆるーい日本に憤っている人には絶対に観てほしいドキュメンタリーの秀作である。賢明に我々の為に文化を護った先達の存在は、自分がこの国に生まれた事を誇りに思えた観後感を残してくれた。
マスコミ試写であった為、終映後には金髙監督の言葉を聞くチャンスもあった。ラジオでたまたま聴いたニュースを掘り下げて取材しようと思われた行動力に拍手である。クリエイティブは感性や才能では絶対にない。行動力あるのみ。真のドキュメンタリー作家の生き様を見たようだった。
大阪ではシネ・ヌーヴォにて5月10日よりロードショーが開始される。必見です。
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